あかり

行灯(あんどん)は灯し油(ともしあぶら)を入れた油皿(あぶらざら)に、灯心(とうしん)を浸して点火するだけの照明器具だそうです。

裸火だけでは明るくなる面積が狭いので、障子紙を張った木枠の中に油皿を置き、障子紙越し散光させた光を広い範囲で柔らかく照らす。当然柔らかくなった分だけ光は弱くなりますよね。

 

灯し油(ともしあぶら)は、それぞれの土地で手に入れやすい油を使った、ということで、そういったもののなかった江戸では大阪産の綿実油(めんじつゆ)とか菜種油(なたねあぶら)を使うことが多かったようです。また、もっと安い油としては、近海で取れるイワシの油を使うことも多かったようです。イワシの油の絞り粕は干鰯(ほしか)といって良い肥料にもなったのだそうですよ。でも、かなり臭かったでしょうね。

深川江戸資料館でも入るとすぐのところに大店の油屋「多田屋(ただや)」が商いをしています。看板に「干鰯魚〆粕(ほしかざかなしめかす)・魚油問屋」とあり、畑作の肥料としてだけでなく、灯油としても売られていたと聞きました。

 

灯心は藺草(いぐさ)が主で、大き炎が必要な場合は木綿糸を使う事もあったんだそうです。これらは油に沈みにくいほど軽いものなので、「掻き立て(かきたて)」という、心が短くなった時につまみ上げる金属か陶器製のものを重石として使っていたのだそうです。

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そしてこの行灯の明かりは60ワット電球の50~100分の1、直径2センチ、長さ20センチ位のロウソクの5分の1だったそうです。
日の出とともに起きて、日の入りとともに寝床に入る生活が、わかるようですね。

 


参考:大江戸しあわせ指南 身の丈に合わせて生きる(小学館101新書)